この記事をシェアする

二宮飛鳥 吉野家コピペ

ところでプロデューサー。ちょっと聞いて貰えるかい。仕事とは関係ない話で恐縮なんだけど……
……ありがとう。キミならそう言ってくれると思っていたよ
さて、何から話したものかな。
……昨日のことだ。
レッスン帰りにふと『俗世』に触れたくなってね。
アイドルという肩書は時に、世界をガラス越しにしてしまう。
だからボクは、そのガラスを割りにいったのさ。
さて……どこだと思う?
フフッ。御名答。吉野家……そう。あの日本を代表する牛丼チェーン店さ。

意外だと思うかい?
それは偏見だよ、プロデューサー。たまにはボクだってカロリーとジャンクな味わいを求めたい日もあるのさ。
キミは吉野家を軽く見ているかもしれないが、あれだけ低価格で牛丼を提供することができる企業努力を笑ってはいけないよ。
……おっと、話がズレてしまったね。

そう。遅い昼食を摂るために吉野家に行ったんだけど……
店に足を踏み込んだ瞬間、ボクは違和感を覚えた。
普段は人もまばらなその店舗はいつになく熱気と喧騒に包まれていてね。中々腰を下ろすことができなかったのさ。
さて、一体何があったのだろうか。そう思案するボクだったけど、あっけなく答えは見つかった。
……店外に連なり、風に揺られる150円引きののぼり。
それが彼らの心を魅了したのだと。
ボクは嘆いた。たったの150円。そんな些細な金額に踊らされる愚かな群衆に。
とにかく早く牛丼の味と質量を取り込みたいと渇望していたボクにとって、この熱狂はあまりにも不快なノイズだった。
だけどボクは悟った。曲がりなりにも社会人の端くれとして報酬をいただいている身だというのに、金銭の価値を軽んじるボクこそが、愚かなのではないか……と。
財布と相談しながらメニューと向き合う学生たちの方が、ボクなんかよりもずっと『150円の価値』を理解している。
「よーしパパ特盛頼んじゃうぞー」と笑う四人家族も、きっと多くはない予算をどうにか捻出して吉野家に足を運んでる筈だ、とね。

……『それに気づける飛鳥は偉い』? よしてくれ。本当に偉かったら、そもそも最初から見誤ったりは……
……『本当に偉いのは、過ちを犯さない人間ではない。過ちと気づいて、それを正せる人間』……か。
やれやれ。キミはボクのことを買いかぶりすぎだと思うけれど。……まあ、素直に受け取っておくことにするよ。

さて。そうやって自己嫌悪に陥っていてもお腹は空く。
やっと席について何を食べようかと思案するボクの耳に飛び込んできたのは、これまた信じがたい言葉であった。
『大盛つゆだく』……嗚呼、なんてことだ。思わずボクは天を仰いだ。
彼は吉野家で真に美味しい食べ方を知らないんだ、と。
人の食べ方にケチをつけるものではない、と理解してはいても。こればかりは見過ごすことはできなかった。

『つゆだく』は牛丼の輪郭を曖昧にしてしまう。
味の構造が崩れる。
世界の輪郭をハッキリさせたいボクにとって、それは『牛丼』という存在を冒涜する行為に思えてならなかった。

ある種の使命感に駆られ、ボクは彼に対抗するようにして、こう呟いた。

──大盛りねぎだくギョク

とね。
知っているかい? これが現代における吉野家通の最新流行なんだ。
ねぎだくというのは……そう。さすがはプロデューサーだ。『ねぎ多めで肉少なめ』。大正解だよ
そして、それに大盛りギョクをつける。これこそが志向の一品さ。
しかしこれを頼むと次から店員に目をつけられてしまう、諸刃の剣。
悪いことは言わない。プロデューサーは牛鮭定食から始めることをお勧めするよ。

この記事をシェアする